幾千度も夢の中で彼女を探しつつける星華高校職員室。
「先生、決めました。進学します。ただし、北都大学ではなく、保安大学校の情報学部に進みたいんです」
深秋の風に、天海依乃莉(あまみ いのり)の細い肩がわずかに震えた。それでも、その瞳は凛として揺るぎない。
大林先生は一瞬呆然とした後、次の瞬間、喜びの表情を浮かべた。
「天海くん、ついに考えが変わったのね!てっきり時田隊長と結婚するために、北都大学の推薦枠を君の従妹に譲るのかと思っていたわ。
でも、保安大学校の情報学部は特殊なの。我が国の秘密組織の要員として育成されるから、入学すると、前の経歴を全て抹消されて、偽名で生活しなければならないんだよ。ご家族とは話し合ったの?」
「大丈夫です。自分で決められます」
「家族」という言葉を聞いた瞬間、依乃莉の胸の奥が少し疼いた。
――でももう大丈夫。彼らの世界から完全に消え去れば、もう何も奪われずに済むのだろう。